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顎変形症 [ がくへんけいしょう ] とは
上あご(上顎骨)または下あご(下顎骨)のどちらか、あるいは、その両方で骨格的に位置のずれや形態の異常(非対称)が大きく、顔貌や咬み合わせの異常を起こしている状態を「顎変形症」といいます。
その病態は、下あごが前方に出ている場合(受け口)や上あごが著しく突出している場合(出っ歯)など様々です。
顎変形症の場合、通常の矯正治療だけでは十分な治療結果が期待できない場合が多く、あごの骨を外科的に手術で切って動かす「外科矯正治療」が行われます。
外科矯正治療
外科矯正治療は、全身麻酔による本格的な手術が必要になりますが、大きな治療効果が期待でき、矯正治療の中では唯一保険が適用されます。手術は、下あご単独手術の場合と上下あごの両方手術する場合があります。原則、口の中からの手術になるため、顔などに手術の痕が残ることはありません。入院期間は、約10日前後です。
治療の対象となるケースとしては、上顎前突症(出っ歯)、上顎後退症(受け口)、下顎前突症(著しい受け口)、下顎後退症(出っ歯、睡眠時無呼吸症候群など)、開咬症(前歯が咬み合わない)、顎骨非対称(あごの歪み・顔の非対称)などで、外科矯正治療を行うことで、機能的ならびに審美的障害を改善します。
【メリット】
・健康保険が適用となり、治療費負担が抑えられる。
・通常の矯正装置だけでは治療が出来ないような難しいケースの場合でも治療が可能となる。
・歯や歯を支える周りの組織(骨や歯周組織)に対する負担を軽減できる。
・口元や横顔など審美的な部分で、通常の矯正よりも大きな治療効果が期待できる。
・治療期間が短縮できる場合がある。
【デメリット】
・手術は全身麻酔で行い、約10日前後の入院が必要となる。
・入院前は臨床検査などため数回の通院が必要な場合がある。
・手術直後には、顔の腫れや一時的な麻痺などで口があまり開かないため、食生活や会話に多少不都合を感じる期間がある。
・保険適用による治療は、「自立支援医療機関(育成医療・更生医療)」あるいは「顎口腔機能診断施設」の指定を受けている医療機関でしか行われていない。
顎変形症の治療の手順
(1) 精密検査・顎機能検査から診断結果・治療説明まで : 約2~3週間
(2) 外科手術についての説明および臨床検査(提携病院)
(3) 術前矯正 : 約1年~1年半
(4) 手術 : 入院期間約1~2週間
(5) 術後矯正:約半年~1年半
(6) 保定期間:約2年
顎変形症の治療費用
治療費は、患者様ごとに治療内容、装置や通院期間が異なりますので、「全体でいくらかかります」と明言できません。保険が適用される医療機関で矯正治療を受ける場合とそうでない場合でも異なり、入院期間・通院回数や手術の内容によっても異なってきます。
保険診療にて顎変形症の矯正治療を受けるには、自立支援医療機関(更生・育成医療機関)、顎機能診断施設の指定を受けた医療機関(病院やクリニック)である必要があります。指定医療機関では、手術を含め全ての治療内容で健康保険の適用となります。
目安として、保険が適用される医療機関で矯正治療を受けた場合は、矯正費用と外科手術・入院費用を合わせて約40~50万前後の支払いです。保険が適用されない医療機関で矯正治療を受けた場合は、すべて自費負担となりますので、矯正費用と外科手術・入院費用を合わせて約200万前後の支払いと考えておくといいでしょう。
顎変形症の治療(Case 外科矯正+審美ブラケットで改善)
治療前
骨格性の反対咬合(下顎前突・受け口)の顎変形症の患者様です。通常の目立たない審美的なブラケットによる矯正治療に外科矯正手術を併用して治療を行いました。
治療後
手術前の審美ブラケットによる治療が10ヶ月、外科矯正の入院期間が7日、手術後の矯正治療が8ヶ月で完了しました。大きく突出していた下顎は適正な位置になり、しっかりと上下の歯が咬み合う状態になりました。
治療費は、健康保険が3割負担の方の場合、総額約50~60万円程度(矯正料金および手術・入院費等を含む)です。 ただし、保険適用の場合は、症状によって患者様ごとで通院回数や合計費用は変わってきます。詳しくは、当院をはじめとした専門的な医療機関にご相談ください。
※治療結果は、患者様によって個人差があります。